EMBO Workshop on
the Operon Model and Its Impact on Modern Molecular Biology
(May 17-20, 2011; Institut Pasteur)
アラン・バディウさんによる哲学と政治の不可思議な関係 (2011-02-18)the Operon Model and Its Impact on Modern Molecular Biology
(May 17-20, 2011; Institut Pasteur)
The review article entitled “Genetic Regulatory Mechanisms in the Synthesis of Proteins“ or in brief the “Operon model” by François Jacob and Jacques Monod was published in the Journal of Molecular Biology on June 1961 (J.Mol.Biol. 3, 318-356, 1961).
上の案内にあるように、オペロン・モデル誕生から50年を記念したシンポジウムが今日からパスツール研究所で始まった。午前中、研究所のビブリオテークで今抱えている課題を進めた後、午後から会に顔を出す。参加者のリストを見ても日本人の名前は見られない。4-5人のノーベル賞学者を含む演者の三分の一くらいは馴染みがあるが、こちらに来てから稀ではない見知らぬ人に囲まれての会になる。今日は歴史的なお話や哲学的なことも交えた発表が中心であった。いくつか興味深い内容があったので、書き留めておきたい。
会には今回の主役の中でただ一人健在なフランソワ・ジャコブさん (François Jacob, né le 17 juin 1920 à Nancy)が参加。もう少しで91歳になるが、杖を離さないものの奥ゆかしい洒落っ気があり、お元気だ(上の写真のスライドでは左の方で、ステージ中央で腰掛けている)。司会者が発表の前に英語でやるのか、フランス語かと確かめていたが、フランス語で話していた。抄録集に英語はありますので、美しいフランス語の香りを味わってください、とは司会者の言葉。発表が終わると退席されていた。
最初に挨拶に立った所長のアリス・ドートリーさんは、50年前に発表された研究の内容とその研究がどのような条件の下に生れたのかについて語っていた。ノーベル賞をもらったジャコブ、ジャック・モノー (1910-1976)、アンドレ・ルヴォフ (1902-1994) の御三方とも芸術家で、ジャコブさん、モノーさんは文筆に冴えを見せたのは言うまでもないが、ジャコブさんとルヴォフさんは絵をやり、モノーさんは音楽家になることも考えたほどであった。ジャコブさんとルヴォフさんの作品を紹介していたが、ジャコブさんの1956年の作品は所長室に飾ってあるという。50年後のパスツール研究所の研究者は物乞いをしなければならなくなっているというユーモアなのだろうか。
それから彼らの発見に至る条件ついては、人がある時一つの場所に集まったこと、そのことも含めた偶然、好奇心、研究を愉しむ心、友情、信頼、チームワークなどを挙げていた。そのことを踏まえてか、ドートリーさんは型に嵌めた共同研究ではなく、自然発生的な交流が生れるようにしているようだ。
その次に挨拶に立ったのは、今回の会を後援している EMBO (欧州分子生物学連合)の事務局長を昨年から引き継いだマリア・レプティンさん (Maria Leptin)。まず、ジャコブさんに対して、EMBO の設立から関わり、その後も支援を惜しまなかったことを感謝していた。その徹底ぶりについて、昔の資料を示しながら捻りを加えて紹介していた。「自分が会議に出席できない時、他の人は手紙を出すだけでしたが、フランソワは代理を送っていました。その名をモノーという」。こういうセンスは嫌いではない。
また、現代の科学に対する彼女の見方には共振するところがあった。科学とは事実を発見することだけでは終わらない。それをある枠組に入れ直して、そこにある意味を見出す必要があることにはポアンカレの言を待つまでもなく異論はないだろう。モノーは一日に2-3時間は人と話すことをやり、話しては考え、考えては話すことを繰り返していたという。そして、彼女は "night science" の重要性について触れていた。それは、昼間に事実を集めた後、夜にその内容について語り合いながら考えるという営みを意味している。最近ではこれが忘れられているのではないかと語っていた。これはまさにヘーゲルのミネルバのフクロウである。哲学的営みになる。
上の案内にあるように、オペロン・モデル誕生から50年を記念したシンポジウムが今日からパスツール研究所で始まった。午前中、研究所のビブリオテークで今抱えている課題を進めた後、午後から会に顔を出す。参加者のリストを見ても日本人の名前は見られない。4-5人のノーベル賞学者を含む演者の三分の一くらいは馴染みがあるが、こちらに来てから稀ではない見知らぬ人に囲まれての会になる。今日は歴史的なお話や哲学的なことも交えた発表が中心であった。いくつか興味深い内容があったので、書き留めておきたい。
会には今回の主役の中でただ一人健在なフランソワ・ジャコブさん (François Jacob, né le 17 juin 1920 à Nancy)が参加。もう少しで91歳になるが、杖を離さないものの奥ゆかしい洒落っ気があり、お元気だ(上の写真のスライドでは左の方で、ステージ中央で腰掛けている)。司会者が発表の前に英語でやるのか、フランス語かと確かめていたが、フランス語で話していた。抄録集に英語はありますので、美しいフランス語の香りを味わってください、とは司会者の言葉。発表が終わると退席されていた。
最初に挨拶に立った所長のアリス・ドートリーさんは、50年前に発表された研究の内容とその研究がどのような条件の下に生れたのかについて語っていた。ノーベル賞をもらったジャコブ、ジャック・モノー (1910-1976)、アンドレ・ルヴォフ (1902-1994) の御三方とも芸術家で、ジャコブさん、モノーさんは文筆に冴えを見せたのは言うまでもないが、ジャコブさんとルヴォフさんは絵をやり、モノーさんは音楽家になることも考えたほどであった。ジャコブさんとルヴォフさんの作品を紹介していたが、ジャコブさんの1956年の作品は所長室に飾ってあるという。50年後のパスツール研究所の研究者は物乞いをしなければならなくなっているというユーモアなのだろうか。
それから彼らの発見に至る条件ついては、人がある時一つの場所に集まったこと、そのことも含めた偶然、好奇心、研究を愉しむ心、友情、信頼、チームワークなどを挙げていた。そのことを踏まえてか、ドートリーさんは型に嵌めた共同研究ではなく、自然発生的な交流が生れるようにしているようだ。
その次に挨拶に立ったのは、今回の会を後援している EMBO (欧州分子生物学連合)の事務局長を昨年から引き継いだマリア・レプティンさん (Maria Leptin)。まず、ジャコブさんに対して、EMBO の設立から関わり、その後も支援を惜しまなかったことを感謝していた。その徹底ぶりについて、昔の資料を示しながら捻りを加えて紹介していた。「自分が会議に出席できない時、他の人は手紙を出すだけでしたが、フランソワは代理を送っていました。その名をモノーという」。こういうセンスは嫌いではない。
また、現代の科学に対する彼女の見方には共振するところがあった。科学とは事実を発見することだけでは終わらない。それをある枠組に入れ直して、そこにある意味を見出す必要があることにはポアンカレの言を待つまでもなく異論はないだろう。モノーは一日に2-3時間は人と話すことをやり、話しては考え、考えては話すことを繰り返していたという。そして、彼女は "night science" の重要性について触れていた。それは、昼間に事実を集めた後、夜にその内容について語り合いながら考えるという営みを意味している。最近ではこれが忘れられているのではないかと語っていた。これはまさにヘーゲルのミネルバのフクロウである。哲学的営みになる。
レプティンさんの紹介の時に司会者がこんなことを話していた。聞き間違いでなければ。EMBO の本部の候補地にニースがあがったが、あそこは退職したイギリス人が住むところで若い研究者が行くところではないので止めになったという。そう言えば、ニースにはイギリス人の散歩道もあった。そういう町に見られているのかという思いでこの話を聞いていた。
ニース美術館とマセナ美術館にて (2011-04-28)
それから面白かったのは、ジャコブさんのアメリカからのグラントでまだ使っていないものがあることが最近分かったというお話。それを元に若手研究者のためのフランソワ・ジャコブ賞を創設したという。賞金は100万程度なので5-6年は続きそうとのことだったが、寄付をする人が出てくれば長く続くことになるのかもしれない。
その他の発表では、Jon Beckwith さん、Mark Ptashne さん (やはり音楽家) のお話に参考になることが含まれていた。今日全体の印象は、歴史や人間を大切にしているということだろうか。こちらではよく浮かんでくる感想になる。歴史や人間を掘り起こしては語り、そこに新しい意味を見出す試みを繰り返し行わなければ科学が文化として根付くことはないのではないか。そんな想いで会場を後にした。
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