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メインの電気が消えた部屋。そう言えば、数日前のこと。ランプから変な音が出ていたのを思い出す。息絶え絶えの今際の声だったのかもしれない。他の明かりはないかと探すと置いているだけだったスタンドが二つもあることがわかる。それを点け、普段は意識しない机の上の小さなランプも点けると柔らかい光が部屋に溢れた。バルコンに出ると周りのアパルトマンからオレンジ色の明かりが漏れ、中には煙草を吸うためにバルコンに出ている人影も見える。空に目をやると、明るく光る星が数えるほどしか見えない。しかし、目が慣れるうちに弱い光の点が次から次に目に入ってくる。もう20年以上も前に見たアフリカの空から滴り落ちるかのような満天の星を思い出す。
一夜明けるとカーボンコピーのような快晴。ただ今日の空には数えきれないほどの飛行機雲が走り、しばらくすると空が薄曇りになるくらいだった。途中、5センチほどの真っ黒い蜂が轟音とともにわたしの目の前に顔を出した。こんなところまで上がってきてお前さん一体何やってるの、と声を掛けると、すぐに下に降りていった。物分かりの良い蜂だ。
この世では不思議なことが起こる。市役所の公共の空間を担当している助役から手紙が来たので早速開ける。要約するとこんなことが書いてあった。x月y日z時、住所aにおいてあなたは不法廃棄をして調書を取られましたが、公共の空間を適切に使うのが市民の務めです。このことをよくご理解いただきたい。そう言われても、全く身に覚えがない。一体どのようにしてわたしの名前と住所を引き出したのか。フランス語の練習も兼ねて市役所まで出掛けることにした。数か所を回り、結局最初に入った助役のオフィスに戻ると手紙の主は会議で不在だという。可能性はなさそうだったが、ランデブーの予約をして帰って来た。
一日(ひとひ)として同じ日は無し春の宵
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