mercredi 24 avril 2013

「曖昧さに耐えること」 再び、あるいはネガティブ・ケイパビリティ


昨年9月、神経心理学会で教育講演をする機会に恵まれた

このようなことが起こると、人生がどのように転ぶのか予想などできないことがわかる

学会ではいろいろなことを学ぶことができたが、その一つにネガティブ・ケイパビリティがある

 イギリスの詩人ジョン・キーツJohn Keats, 1795-1821)が最初に使ったとされる negative capability である

わずか25歳でこの世を去った若者の言葉である

いろいろな解釈がありそうだが、不確実、不思議、未解決の状態を受容する能力とされている

何だかわからない不安定な状態に居続ける能力である

これは科学で求められる能力とは対極にあり、哲学者に求められる能力のようにも見える

 キーツはこの能力が芸術家、特に詩人に必要だと言っている

この世界の現象、人間の営みを一つの理論や概念に置き換えようとするのではなく、そのまま受け入れる柔軟性

即効性のある解を得て安心するのではなく、様子の見えない霧の中で耐える能力


この能力、以前に問題にした「先送り」とどこかで繋がっているようでもある

 「先送り」 再考 (2006-05-05)
「先送り」再々考 (2007-09-24)

キーツはシェークスピアに並外れたものを見ていたようだが、モンテーニュが持ち続けた能力とも通じる

モンテーニュ I-VIII (2007-09-15~2007-09-23)

そう言えば、エドガール・モランさんも対談『危機の時代にどう生きるか』の中でそんなことを語っていた



ウィキによれば、日本語訳として「消極的能力」、「消極的受容力」、「否定的能力」などがあるという

このいずれもが的を外しているのではないだろうか



Life mask of Keats by Benjamin Haydon, 1816




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