vendredi 31 mai 2013

モンテーニュさんの終の棲家へ



午前中、近くのカフェで書いた後、午後からこの塔を目指した

ミシェル・エケム・ド・モンテーニュ(Michel Eyquem de Montaigne, 1533-1592)の塔である

写真があるということはそこに辿り着くことはできたわけだが、小さなドラマがあった



 まず、ボルドーのサン・ジャン駅で

出発5分前になっても案内をしていただく方を見つけることができず

緊急の用事でもできて来られなくなったけれど連絡の方法がないということではないかと思い、一人で乗り込む

しかし、何か方法がないかと思案している時、普段は使わない携帯を持ってきていたことに気付く

連絡すると、駅の入り口にいるとのことで、急いでホームに来るようにお願いする

出発3分前

ホームに出て駅員に少し待ってくれるようにお願いするも、肩を挙げ、両手を広げるだけ

何度頼んでも、同じ動作を繰り返す

その時、全速力で走ってくる姿を確認

乗り込むと同時に発車した

もし携帯のことを思い出さなかったとしたら、と考えると冷や汗が出る

それにしても申し訳ないことをしてしまった

しかし、それだけでは終わらなかった



目的と思われる駅に着いた時の景色がこれである

これでは如何ともしがたい

確認しようと思っているうちに、電車は動き出してしまった



 動き出してから話しかけてくれたのが、この方

ボルドーからわたしの方を見てにこにこしていたので、不思議に思っていた

 話してみると、そこに深い意味はなく、日本語の勉強を自分でやっている高校生

バカロレアで日本語の試験を受けた(る)と言っていた・・・ようだ

フランス語を話そうとせず、日本語で通していたのでその確度についてはわからないのだが、、

困っている日本人に目的の駅は通り過ぎたことを知らせたかったということだろう



 次の駅も駅舎は閉鎖され、バスやタクシーなどの交通手段がない

偶然近くに現れた方に訊いたところ、タクシー会社に電話をかけてくれた

何とも趣のある駅の電話機を使って

生活のテンポが実にゆったりしていて、人に対する時間をたっぷり取ってくれる

 教えられたタクシー会社数か所に案内の方に電話していただき、1時間ほどでタクシーが到着



 地元出身のドライバーが道すがら土地の素晴らしさを説明してくれる

良心的な方で、それまでの紆余曲折を忘れる気持ちよい田舎道のドライブとなった



 モンテーニュの塔に向かう途中、この方が広い敷地内を整えているのが見える

入口を訊いてみると、塔の小さな窓(引っ込み)に鷹の子供が住んでいると言って、口笛を鳴らしてくれる

母親はどこだろうかと言って、また口笛を鳴らす

自然と一体になっている生活を垣間見ることができる瞬間であった



 丁度16時から塔内の案内が始まるとのことで、数名のフランス人と一緒に過ごす

モンテーニュ38歳の時、静寂と自由を求めて公職を退き、この塔に籠もる

亡くなるまでの20年あまりを思索と執筆に使うため、ここを選んだのである

見たいと思っていた最上階の書斎の天井も見ることができた
 


元のお城は焼けてしまったようだが、ここでモンテーニュは生まれ、ここで59年の生涯を閉じている


モンテーニュの座右銘と言われるQue sais-je の文字が見える



受付の建物では、ワインの試飲が可能

記念に Essais の2009年ものを手に入れた

長い一日の短い滞在だったが、これからに繋がる何かが残ったように感じている

いつものように、それが何なのかは今はわからない




こちらに来た当時、Le Point の特集をまとめたものが前ブログに残されている

 
 モンテーニュ (VIII) 年表と関連資料 (2007-09-23)

モンテーニュ (VII) そして死 (2007-09-23)

モンテーニュ (VI) 流れゆく生 La vie comme passage (2007-09-22)

 モンテーニュ (V) 王国を救う Préserver le royaume (2007-09-20)

 モンテーニュ (IV) 愛、悲しみ、そして 「エセー」 L'amour, le deuil, les livres (2007-09-18)

モンテーニュ (III) 頭と足 La tête et les jambes (2007-09-17)

モンテーニュ (II) 天上の言葉 Un ciel de phrases (2007-09-16)

モンテーニュ事始 Montaigne (2007-09-15)

 
今回の訪問とこれまでの5年あまりの間の変化が、これらの記事を書いた当時を客観化できるだろうか

これまでの経験が理解を深めているのかどうか、そのあたりに注目しながら読み直してみたい





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