samedi 2 juin 2012

エッシャー美術館で現実と相の移行を考える



快晴の中、いくつかのアイディアを持ってデン・ハーグへ出かける
長い充実した一日だったので、とても一息にはまとめられない
ゆっくりと味わい直しながら進めてみたい

今日は最初から予定が裏切られた
マウリッツハイス美術館Mauritshuis) で2点のフェルメールを観るつもりだったからである
ハーグに着いてからそれらしいところを何度も探したが、見つからず
最後に広場の人に聞くと、現在改装中で閉まっているという
その美術館は何度かその前を通った、柵で囲まれたこじんまりした建物だった

こういうことは熱烈なファンの方なら常識なのかもしれないが、やや拍子抜けする
カフェで休んでから一日の計画を練り直す
作品はよく紹介されているので見たことはあるが、真面目に味わったことはなかった
丁度良い機会なので行ってみることにした

短い滞在だったが、彼の世界の特徴がわかりかけたような気がした
妙な切っ掛けだったが、行って正解だった
以下に、ほんの少しだけ紹介したい

Zelfportret, 1919


 
 Zelfportret, 1923  


 Zelfportret, 1929


Maurits Cornelis Escher, 1898-1972)


彼はわたしの知らなかったタイプの作品も描いていた
以下の二つの作品は水面が主役で、光と反射が美しく、しかも詩情に溢れている



 
 

 Metamorphose I, 1937


Tag en nacht, 1938


 Bevrijding, 1955 
(Liberation)


この手のものはこれまでに見ているが、じっくり対面したのは今回が初めて
上の三つの作品はタイトルにもなっているように、ものが変容する様を描いている
どこから新しい相になるのか識別できず、気が付くと全く別物になっている
「こと」 が移り変わる時、ほとんどの場合は段差などなく、繋がりを以って変化しているはずである
そのことを改めて考えさせてくれる

あるいは、エッシャーさんはこれらすべての相を同じ時間に見ていたのだろうか
現実をこんな目で見ることができるとすれば、面白そうである
例えば、ある建物や人の過去、現在、未来がその周りに広がって見えるのである
そういう見方をわれわれは時に必要としているのかもしれない
計算され尽くしてはいるが、こちらの作品にもどこか詩情が漂っている

最後の作品を見ていて思いついたのだが、「変容」 は 「解放」 と同義ではないのか
解放を目指してどこまでも変容を続けるのがわれわれではないのか
言葉の意味は同義にはならないだろうが、これらの作品がそんな想像を誘発してくれた

個人的には真ん中の 「昼と夜」 のスケールが気に入った
美術館に入る時には気付かなかったが、正面に飾られているのはこの作品だった
何の意味も持たなかったものが1時間ほどで意味を持ってくる
意識が広がるこの感覚も捨てがたい

 
 Relativiteit, 1953


この系列の作品も見ているが、時間をかけてお付き合いしたのは初めて
ぼんやり画集などを眺めているのではなく、全身を使って対峙していると受け止め方が違ってくる

今わたしは上っているのか、降りているのか
進んでいるのか、戻っているのか
どこにいるのかわからなくなる感覚
わたしの人生における歩みそのもののようにも見える
どこか、この世界の中に浮遊しているとでも言いたくなるような感覚でもある

今日などもデン・ハーグの町にいながら、今どこを歩いているのかわからなくなる
 時間と位置関係がわからなくなるこの感覚
嫌いではない
エッシャーさんもそうだったのだろうか


エッシャーさんはデルフトの景色も描いてくれていた
その中から二つだけ
市庁舎前のマーケット・プレースとデルフトの屋根


Grote Markt, Delft (1939)


Daken, Delft (1939)
 

 ところで、デン・ハーグの印象は悪くなかった
ロッテルダムのように高層ビルはあるものの、古い建物や雰囲気のあるカフェなどもあり、個人的にはほっとした
今日話した方々も皆さん親切でフレンドリーであった
また、週末のせいか街中では音楽もにぎやかだった
美術館を出たあたりで、この曲の生演奏が流れてきて気分が高揚する
その建物に行ってみると、人々が集まり若者7-8人が演奏していた








2 commentaires:

  1. 時折訪問させていただいております。
    今、ハーグに住んでおり、今回は特に興味深く拝見いたしました。
    エッシャーさんの絵は、想像力を掻き立てますね。

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  2. 訪問並びにコメントありがとうございます。
    今回初めてじっくりエッシャーさんの作品と対面しましたが、確かにいろいろな想像をさせ、時に考えさせるところがあることがわかりました。どんな人だったのか、少し興味が湧いているところです。ところで、ハーグも初めての町でしたが、気に入りました。実際に暮らすとどうなのかはわかりませんが、第一印象を大切にしたいと思っています。
    お元気でお過ごしください。

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