僅かな間なのだが、いつも貴重なヒントが出てくる場所と時間になっている
この本はこちらに来て初めて読んだが、今回読み始めてすぐ、先日浮かんだ考えが蘇ってきた
しかし、読み進むうちにその考えが何だったのかが消えて行った
これはよくあることなので、すぐに控えるか、その時点でその考えを弄ぶことを義務付けている
しかし、今回は高を括っていた
それを思い出すために最初に戻り、前の状態を再現しようとするができない
さらに読み進みながら思い出そうと暫くやっていると、やっと出てきてくれた
それは次のようなことである
これまでの長い間、頭の中はこうあるべきだという思考で埋め尽くされていた
理想を求め、未来を語ることに執着していた
そこでは理想が対象になっているため、いつまで経ってもそこには辿り着かない
そのため、現実の中に入って行くことなく、いつも待っているのである
理想を繰り返しているだけなので、思考も怠惰になる
それがこちらに来てから変わってきているのではないか
それは、日常的に過去のものを読むようになったことと関係があるのかもしれない
理想ではなく、現在あるいはこれまでの在るが儘の姿はどうなのか、どうだったのか
どうあるべきかという視点から、この問いに関心が移ってきたのである
今を否定してどこかに向かうという視点から、今を受け入れるという姿勢への変化とも言える
われわれが遂げ得る変容は、目に見えないほど微小なものであることにやっと気付いたからかもしれない
そうであるならば、この世界の全体をその儘理解しようとすることの方が余程有用になるだろう
この世界を変えようというよりは、この世界のすべてを視野に入れ、そこに分析の手を加えるという方向性
未来や理想を語る前に、過去から現在に至る姿に目を向けよ、という命令
その命令を目の前にすると、怠惰に陥る暇がなくなる
これまでのふわふわした状態から、地に足が付いたような安定感を覚えるようにもなってくる
目指すところだけを見ると、プラトン的な世界からアリストテレス的な世界への変容と言えるだろうか
いずれにせよ、そのことに気付いたのが、先日のことであった
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