今日は朝からユネスコ本部で開かれる 「世界哲学デー」 に出かける
このようなものがこの世に存在することを知ったのは、2年前の11月
全くの偶然であった
今年のテーマは、「未来の世代」(Générations futures)
未来の世代への責任と特に子供に対する哲学教育が問題になっていたようである
哲学は自立した批判精神を教え、自らを世界に開くことにより世界の理解を深め、寛容へと導く
このメッセージを若い世代に伝えることを目指しているようだ
さらに、今年生誕300年を迎えた
ルソー(Jean-Jacques Rousseau, 1712-1778)を考え直す意味もあるようだ
「ようだ」 とばかり書いたのは、そちらの方には参加しなかったからである
会場に入ると、
La vie - l'art pour l'avenir de l'homme という展覧会のポスターが目に入った
日本人アーティスト Toshi (石井敏美) さんによる 「生命-人間の未来のための芸術」
早速会場に向かうと、2つのスペースを使って作品群が展示されていた
そのすべての前に立ち、写真に収める
人間の像を見ていると、内に秘めたものを自らの限界を超えて吐き出そうとする生命が持つエネルギーを感じる
そのエネルギーで人と繋がろうとしているようにも見える
それは生命に内在する力へのオプティミズムであり、希望なのか
自らを閉じ込めているこの体からの解放を求める叫びなのか
作品をいくつか紹介したい
そこに宿る生命の力がこの写真から伝わるだろうか
これは2002年に寛容と非暴力推進のためのUNESCO/Madanjeet Singh賞のトロフィーに採択された
会場に入ってすぐに目に付いた作品になる
こちらは人権文化向上のためのUNESCO/Bilbao賞に採択された像である
今回は子供に向けた哲学教育が一つのテーマになっているためか、やんちゃな小学生が多く見られた
その中に混じっている方が Toshi さんである
日頃はアトリエに籠もって創作の日々とのこと
福岡のお生まれで、女子美とパリの
エコール・デ・ボザールに学び、若き日には世界中を旅されている
パリに落ち着いてからも、世界各地で展覧会をされているようだ
お話を伺いながら、
埴谷雄高さん (本名 般若豊、1909-1997)の言葉を思い出していた
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これからはね、人間が人間として話をできるのは、芸術家だけですよ
社会的に偉そうな奴はみんな駄目ですよ
事務的なことしかしゃべれないから、人間と人間の話をしないですよ
芸術家は人間を考えているわけだから、男と女の話をする
芸術をやってる人、しかも苦労して人間のことを非常によく考えている人は、お互いに知識の交換みたいなことをするわけですよ
芸術とは、公表してお互いに思うことを話し合うことなんですよ
何千年の歴史の中でね、芸術のいいところはね、くだらないことを書いても軽蔑しないこと
人間は神様じゃないからできない
しかし全体として、自由業で生きてる者に悪い人間っていうのはいないですよ
というのは、自由を求めてる人だからね
満たされない魂を持ってる人だから(笑)
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会場で西日本新聞のパリ支局長をされている国分健史様にお会いする
Toshi 様が福岡出身とのことで、すでに取材をされていたようである
TOSHIさんの作品展、ユネスコ本部で開幕
(西日本新聞、2012年11月13日)